ゴキブライド その1
「ギャーーーーーーーーーーーーーー!」
遠くの方で断末魔。また戦死者が出たらしい。
前線でネズミが暴れているという。昨日もそうだった。
あいつらの好物は僕らゴキブリだからだ。両手に備えられた爪で引き裂き、凶悪に光る前歯で襲いかかってくる。あの前歯で体を貫かれれば、僕らの体は2つに裂け、簡単に腹わたをぶちまけられる。引き裂かれた者は無様に転がり、痛みと恐怖にあえぎながら手足をばたつかせる事しかできない。
あいつらはそれをせせら笑い、貪るのが大好きなんだ。
もうやめて欲しい。これ以上誰かが死ぬのは見たくない。
僕は眉間にしわを寄せ、頭を抱えた。
「おい、新入り!死体袋用意しとけ!」
ひげ面のベテランに指示されて、僕は黙って作業を開始する。今日は誰が死んだのか……。
ここは戦場。僕達は食料を調達するために派遣された、食糧確保部隊。
主なターゲットは、死んだ虫の身体、台所の残飯、床にこぼれた人間の食べこぼしだ。
腹が空けばガスレンジにはめた油をつまむし、そこらに落ちている人間の髪の毛をかじる事もある。
任務は食料を持ち帰る事だが、僕はいつも自分が生きて家に帰る事ばかり考えている。それ以外の事は考えられない。
毎回、派遣されるたびに死者が出る。僕の担当は死傷者の運搬だ。大抵、僕らはネズミやカラスに襲われるので、身体を真っ二つに引き裂かれたり、バラバラ死体なんて日常茶飯事だ。
僕はそれを黙って運ぶ。最初は死体を見ただけで吐いていた。
一昨日も吐いた。昨日も吐いた。今日も吐くかもしれない。正直、こんな仕事はもうたくさんだ。やめてしまいたい。だけど、夢を叶えるためには必要な事なんだ。
僕の両親は、僕がタマゴの時にそろって死んだと聞かされている。ホウ酸団子に当たったらしい。ちゃんとした料亭で調理されるされるはずだったのだが、板前が客と一杯やって酔っ払ったままホウ酸団子を調理し、決定的なミスを犯してしまったという。その事件は大きな騒ぎとなり、新聞にも載ったとじいちゃんが言っていた。
じいちゃんは僕を今年の春に中学を卒業するまで育ててくれた。ところが、僕が公立の高校に通い始めた矢先、夜道で暴漢に襲われ、帰らぬ人となった。犯人は見つかっていない。
僕は天涯孤独の身となり、通っていた高校を中退。現在の職場に通い出し、一人暮らしを始めた。この仕事を選んだのは、高い給料に惹かれたからだ。ハードすぎる職場だが、やめられない。金が必要なのだ。夢を叶えるために。
「ギャーーーーーーーーーーーーーー――!」
……また誰かだやられたみたいだ。
今日も僕は恐怖と死臭に満ちたこの場所で働いている。
これから
これから不定期にここで小説を書いていこうと思います。
よろしくお願いします(^-^)